まだ第1章の途中までだけしか読んでないのだが、それだけでも判る。これはもの凄い小説だ。
多重世界の世界改変モノなのだが、いわゆる「世界の外の神の視点」からの記述が無く、全て世界の中の登場人物の視点からの記述でできている。*1なので語られている(騙られている?)記憶が本来の真実なのかどうか、いやそもそも本来の真実自体に意味があるのかどうかすら判らない、非常に読者を不安定にさせながら小説が進んでいる。
これはもしかして芥川の藪の中を高度にしたものなのかも。藪の中は少なくとも3人に共通の同じ体験があるというのが暗黙の前提だったが、この永久帰還装置はその体験自体が改変されうる条件の下にあるという、前提が1つ外れたところで話が進んでいる。
記述の視点となる登場人物が替わる時は節が変わり、時には文体さえもが変わっている。同じ人物の視点なのに文体を変えることさえあり、この点は丁寧につくりこまれている。これが後でどう効いてくるのかな。楽しみだ。
- 作者: 神林長平
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/03/01
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 22回
- この商品を含むブログ (27件) を見る
*1:少なくともここまで読んだ限りでは。