路傍亭@はてなブログ

備忘録とか記録とか

川野目亭南天独演会(夜の部)@エルパーク仙台ギャラリーホール

東方落語の落語家で、ラジオのパーソナリティなどもつとめる川野目亭南天の初めての独演会。何も考えずに見に行ったら昼の部は開場時点で売り切れだったので、あわてて夜の部の切符を買って半日時間をつぶして再度ホールへ。写真は会場で配られた記念の南天手ぬぐい。

最初は今野家なにも・かにもに南天師が加わった3人漫才「おだずもっ娘」。南天師の出す話題に3人が順次答えてそれに皆がつっこむという大喜利みたいな漫才だった。最初のにぎやかしとしてはこんなもんか。

続いて南天師の落語『湖底に沈む村』ダム工事で湖底に沈む村の騒動記。昭和50年代のラジオドラマのような噺。失われたノスタルジーが主題なのは主な観客層*1向けなのかな。真面目な噺なので、観客の集中を保つのはなかなか難しいはずなんだが、照明やBGM等を利用した上手い演出だった。こういう噺の終わり方はどうするかなと思っていたら、祭りのスライドをバックに太鼓を叩く仕草をしながら照明がフェードアウトするこれもドラマみたいな終わりかただった。*2こんなん落語じゃないと言う人もいるかもしれないが、こういうドラマ仕立ての話ならこういう終わり方もありだろうなと思う。

たばこ入りの後の2席目は『面接』ぐうたらで無職な息子の面接試験の稽古をつける母親というコメディ。賑やかで楽しいが、コントを見ているみたいだった。コントレオナルドが演じてもいいような台本だった。息子の抜け作具合が愛嬌のある程度で納まっているのは東北人の優しさだな。

南天師の噺は、両方ともほとんど対話で進むという、落語よりは芝居に近い演出だった。そして、東北弁という血肉の通った言葉で話すセリフにより演技に激しくリアリティが出ていた。これは東北弁で演じる落語のものすごいアドバンテージだと思う。『笑芸』という感じはしないが、1人芝居や昔話みたいな演芸として東方落語が目指すところがちょっと見えた感じがした。

*1:見たところ観客の半数以上が60歳から70歳以上

*2:伝統的な落語だったら「(太鼓を叩く仕草をしながら)ドンドンドーンと祭りの太鼓はいつまでも山間に響いたのでした。今はダムの湖底に沈む村の思い出の一席、お粗末さまでした」などと講談みたいなサゲにするだろう。